『ダンケルク』を観てきた
友人の結婚パーティーで関西に戻った帰りに、品川のIMAXで(遅ればせながら)『ダンケルク』を観てきた。
画面がでかく、迫力は満点だった。 id:Forty さんのアドバイスは正しかった。
この迫力満点の甲斐もあり、始終、緊張させられる映画だった。終わった後に後ろのおばちゃんが「緊張しっぱなしで疲れた」と言っていたのには、同意である。 兵士の置かれた極限状態を(ややデフォルメのきいた映像表現で)観客に追体験させる点では優れた映画だったと思う。
ただ、極限状態の「リアリティ」に特化した結果か、作品全体として「リアリティ」が欠けてしまっているように感じてしまった。 市街の陣地で守る兵士が少なかったり、浜辺が綺麗過ぎたり、アトラクションに並んでいるかのような兵士の列だったり……。 描きたいものが違うから仕方がないが、『つぐない(Atonement)』のダンケルクの描写のほうが好きである*1。
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なお、戦場経験のない人間の言う「リアリティ」って意味は分からないな、と自己批判しておく。
「いい奴」でも死ぬし(ジョージとか、あのフランス兵)、「嫌な奴」(ハイランド兵)でも生き残る、そんな「戦場における死のランダム性」はひしひしと感じられた。
ノーラン監督は「兵士」以外は描きたくなかったんだろうなぁと思う。
あと、イギリス人はダンケルク好きねぇと思った。ダンケルクのイメージってああいうのなんだねと。 今、ちまちまながら読んでいる本がこういうイメージに異議を唱えていて面白い。
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「弱いイギリスがダンケルク撤退に大成功して、バトル・オブ・ブリテンでは忍耐勝ち(↑↑テンションMAX↑↑)、その後は、アメリカの腰巾着になって、なんとなーくドイツに勝利」 という第二次世界大戦のイメージが定式としてあるとのこと。これが第二次世界大戦中から戦後、最近までのイギリスの軍事戦略の基礎にあるらしい。
しかし、この本が言いたいことは、「別にイギリスそんな弱かねぇし、そもそも、孤独なイギリスvs枢軸という構図でもない」ということのようだ。 まだ読んでいる途中なのだが、映画を見て読み進めるモチベーションがもらえた。
どうしても自分の関心が大局的・理論的な部分(戦略・作戦・戦術、軍事組織、将校教育、政戦略の調整、資源のコントロールとかとか)に寄りがちなので、こんなことことも書いてしまった。
以下、細かすぎる感想
のっけから、「うおぉ」って思ったのは、土嚢を積んだ陣地で守備に付いている兵士(イギリス軍兵だっけ?)が(たぶん) "bon voyage" って言ってた点。 あの人たちは多分残って、海岸堡を死守して捕虜になったんだろうなと。
最初、桟橋7日間、船1日間、空1時間を「英本土からダンケルクまでにかかる時間にしちゃぁ長いな」と思っていた。 遅ればせながら、描き出してる時間だったってのに気づいたときは、「おぉ……、ターン制のシミュレーションゲームか」ってなったよね。 グランドストーリー自体はここで見えた感じだった。
主人公とハイランド兵ご一行様が棄てられた商船に乗り込むシーンは、さながら自ら棺桶に入りに行ってる感があり、嫌な予感しかしなかった。 近衛兵だのハイランド兵だのどこで見分けてるのか全然わからなかった。
戦闘機が不時着水するときって、衝撃で風防が歪まないように、予め開けておいたりしないのかしら、とか気になった。
ジョージくんが何者なんかがよくわからなかった。ルッキズムとステロタイプ丸出しで「メスチソ?」とか思った。あと、新聞で英雄になってた理屈がよくわからなかった。
あと、あの船の爺さん、設定あるにしても、空軍戦術に詳しすぎでしょ。 でも、爺さんの言うとおり、確かに、スピットファイアのマーリン・エンジンはいい音してた。