ジェーン・オースティン(小山太一訳)『自負と偏見』新潮文庫、2014年(原著:1813年)

自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)

本書のカバーの裏表紙には次の一文がある。

「幸福な結婚に必要なのは、恋心か打算か。」

もちろん、愛情もあり、金銭や人間関係で苦労のない結婚が一番だが、残念ながら、世の中、そういうものばかりでもない。 現代だってそうなのだから、本書の舞台であり、オースティンの生きた19世紀初頭なら、なおさらそうだろう。

本書では「恋心」と「打算」とのグラデーションでいろいろなパターンの結婚が描かれる。

次から次へと目まぐるしく何かが起きる。読み終えたとき、これが本当に数カ月の出来事なのかと思うくらいだ。 押さえるべきところは押さえ、流すべきところは流し、の緩急の付け方が巧妙で、最初を乗り切れば*1スイスイ読み進められる一冊だった。

読み進めながら、ひたすら「ダーシーかわいい」「エリザベスかわいい」と言いまくっていた。

岩波版でチャレンジしたこともあったが、訳があまり自分には合ってないな(現代的じゃないな)と思って、断念していた。 イアン・マキューアンの『贖罪』の訳が良かったので、きっと小山太一の訳なら大丈夫だと思ったら、大当たりであった。 あくまで印象論だが、原文を深く読み込んで、咀嚼し、原作と読者との双方に寄り添った丁寧な仕事をしていると思った。

ちなみに、大学の師匠いわく、当時は年収1000ポンドが、いい家でメイドを雇えるような生活の基準だそうだ。

*1:登場人物が多い上に、ミスターとミセスとミスで区別されているのは、初っ端から、なかなかつらい。